直鞍地区糖尿病性腎症重症化予防連携システム
直鞍地区糖尿病性腎症重症化予防協議会では、直鞍地区糖尿病性腎症重症化予防連携システムの構築をおこなっております。連携システムの一環といたしまして、直鞍医師会、社会保険直方病院腎臓内科のご協力により、糖尿病性腎症の患者さんの一次医療機関(かかりつけ医)から直方病院腎臓内科への診療情報提供書のひな型を作成いたしました。下記よりダウンロードのうえ、ご活用いただければ幸いです。
直鞍地区糖尿病性腎症重症化予防協議会の発足とその取り組み
2018年5月、直方鞍手医師会の医師・事務局、直方市、宮若市、鞍手町、小竹町の担当者、そして嘉穂鞍手保健福祉環境事務所担当者が集まり、直鞍地区糖尿病性腎症重症化予防協議会が発足いたしました。糖尿病性腎症の重症化を予防するためには、糖尿病自体の重症化予防や、医療機関を受診していない糖尿病患者さんの受診を促すことが重要です。そのため、当協議会では、糖尿病連携手帳を使った行政と医療の連携、健康診査後に糖尿病の治療を受けていない人への医療機関受診の勧奨、糖尿病治療を中断している人への再受診の勧奨などの取り組みを行ってきました。新型コロナウイルスの流行による取り組みの停滞もありましたが、糖尿病未治療者と治療中断者への受診勧奨率、そして勧奨後の受診率は、取り組み開始前と比べて大幅に向上いたしました。
糖尿病性腎症に対する早期の医療介入を必要とする理由
1998年以来、糖尿病性腎症は透析導入の主要な原因疾患となっており、現在でも腎疾患による透析原因の約40%を占めています。糖尿病性腎症の早期管理は、将来的な透析の必要性を減らすだけでなく、医療費の抑制にもつながります。さらに重要なのは、患者さんのQOLが向上することです。
糖尿病性腎症は慢性糸球体腎炎などの他の慢性腎疾患と比較して、腎機能の低下から透析導入までの期間が短いのが特徴です。血清クレアチニンが2.0mg/dlを超えると、透析導入まで約2年半とされ、クレアチニンが4.0mg/dlを超えると約1年で透析導入が必要となることが報告されています。このため、慢性腎臓病(CKD)の中でも、特に糖尿病性腎症による腎障害は、できるだけ早期からの管理と治療が必要となります。
直鞍地区のデータからみえる腎障害の実情と腎専門医療機関への紹介
2021年度の直鞍地区における特定健診の結果、受診者6148名のうち、蛋白尿やeGFRの程度に基づき、腎専門医への紹介が必要とされた方は570名でした。また、eGFRが45未満の受診者は193名で、このうち約半数は糖尿病性腎症が原因と考えられます。これにより、直鞍地区には多くの腎障害を持つ方がいることが明らかになりました。
さらに、2021年度の直鞍地区の法定報告によると、eGFRが30以上45未満の患者さん140名のうち、かかりつけ医から腎専門医療機関への紹介はわずか20名、紹介率14.3%という状態でした。eGFRが30未満の患者さん35名のうちの紹介は12名、紹介率34.3%と、腎専門機関への紹介が不十分であることがわかります。したがって、かかりつけ医から腎専門医療機関への紹介率の向上が急務と考えられます。
糖尿病性腎症重症化予防に向けた腎専門機関との連携
このため、当協議会では直鞍医師会と社会保険直方病院腎臓内科のご協力により、直鞍地区の糖尿病性腎症予防連携システムを構築しました。システムの一環として、糖尿病性腎症の患者さんがかかりつけ医から直方病院腎臓内科へ紹介される際の診療情報提供書のひな型を作成しました。この診療情報提供書は、簡便に記入可能で、腎臓専門医が必要とする情報を最低限含むようになっています。また、直方病院腎臓内科からの返信では、かかりつけ医が診療の上で注意すべき点や今後の対応策について記載していただくようご依頼しています。ただし、当協議会のスタンスといたしまして、一次医療機関の紹介先医療機関として他の腎専門機関を紹介を妨げるものではありません。また、社会保険直方病院腎臓内科へのご紹介に際して、自院の紹介状を使用していただくことは問題ありません
この度、かかりつけ医から直方病院腎臓内科への診療情報提供書のひな型をご提供することから、糖尿病性腎症予防連携システムがスタートします。このシステムについては、今後さらに追加や改善を行っていく予定です。直鞍地区の糖尿病性腎症やCKD(慢性腎臓病)の患者さんへのより良い治療を目指して、引き続き直鞍地区の医療従事者また関係各位の皆様方のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
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